真選組の屯所は、誰も彼もが多忙の2文字を顔に貼り付けて足音も荒く歩き回っているような状態であった。
 「桂小太郎が出たそうよ」
 「ふうん」
 そんな慌しい屯所の一角には、小声で耳打ちする真選組の女中、それに生返事をする少女があった。少女もまた女中であるが、一言に使用人と言うには少々普通ではなかった。―――というのも、局長近藤や副長土方らとは、近藤一派が道場を出る前からの付き合いで、その当時門下生だったのである。女ということで真選組に加わることは出来なかったが、今でも鍛錬だけは欠かしておらず、しばしば隊士と手合わせしている。名をといった。
 「そんな他人事ではないのよ。どうせ此処の人たちは派手にやらかしてくるんだから、洗濯だって増えるのよ。さ、働いた働いた!」
 「うおっ」
 気のない返事をするを呆れ眼で見て溜息をつき、彼女の女中仲間は言葉と同時に彼女の背を強く叩いた。強すぎるくらいの衝撃に女子らしからぬ声を軽く上げて前へつんのめったを軽く笑って、その女中仲間は湧いて出てくる仕事をこなすために去っていった。活き活きしているようにも見えるほど、彼女の足取りは軽かった。
 その背中が見えなくなったころ、
 「……なんだよ、もう」
 漸くぽつりと呟いたは、眉根を寄せて頭を掻いたきり、釈然としない顔をしてその場を後にした。彼女は根に持つタイプであった。もちろん、強く背中を叩かれたことに関しても、密かに腹を立てていたのである。



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白いハンカチ1
2008/8/17